1972年生まれ、鳶職としてかれこれ26年目になります。2年目には職長を経験し、以後鉄骨工事、タワークレーンを用いる機械工事などを多数経験してまいりました。記憶に残る案件は、なんば戎橋のTSUTAYAさんのビルです。解体から新築まで4年ほど携わりました。
機械工事とは
鳶工の仕事として、鉄骨工事と並び技術を要求されるのが機械工事です。
大規模な建設工事では、建物を支える杭を支持基盤まで打ち込むことからスタートします。次に、四方からの雨水や地下水の侵入と地盤の崩壊を防ぐ山留め壁を設置しながら、建物の基礎となる地盤を掘削していきます。その際、山留め壁が倒壊しないよう、水平方向に切梁(きりばり)を張り巡らしこれを支えます。ここにコンクリートを打設し建物の基礎部分や地階の躯体を形作っていきます。基礎が出来上がるといよいよ地上の躯体を組み上げますが、ここで必要になるのが、鉄骨を吊り上げ、移動させるためのクレーンです。建設する建物の周囲が広い場合、自走可能な移動式クレーン(ラフタークレーン等)を用いる場合もありますが、都市部の高層建築物ではタワークレーンが必要になります。
参考:一般財団法人建設業振興基金「建設現場で働くための基礎知識(第一版)PDF」
機械工事とは、このタワークレーンを現場で組み上げる作業のことを言います。また、高所作業者の移動のための工事専用エレベータの設置も鳶工の重要な仕事になります。さらにタワークレーンを解体するのも自分たちの仕事です。
タワークレーンの組み立て
タワークレーンの部材は、バラバラの状態にしてトラックで搬入し、現場で組み立てます。部材は、およそ5種から構成されており、「架台」と呼ばれる土台部分、「マスト」と呼ばれる柱部分、その上にクレーンの本体部分となる「運転室」、さらにアームに相当する「ジブ」、最後にアームを釣り上げる「ワイヤー」です。組み立て方は、大きく分けて3つの方法があり、建物の構造や工期等により、最適なものを選択します。1つは、架台を地上部分に固定してマストを上部に継ぎ足して行く方法。本体部分は継ぎ足した柱をよじ登る形になります。2つ目は、架台ごと完成した上階に移動させていく方法。3つ目は、クレーンの柱の代わりに、建物の本節の鉄骨柱そのものを使用する方法です。
機械工事における鳶工の仕事
作業指揮を執る自分は、安全管理を行いながら、作業手順書に従って各者に指示を出します。鳶工の仕事は、部材に玉掛け作業を行う役割や、吊り上げられた部材を移動する際クレーンオペレータに無線で指示する役割を担います。声を掛け合うことが大事です。集中力が必要ですので、休憩時間も有効に使ってメリハリをつけることもポイントです。
仕事の醍醐味
自分が手がけた建物が形になり残ると言う点はもちろんですが、自分の場合、チームを1つにしていくことが楽しいです。それには、部下の性格も掌握し、それぞれに合ったやり方を考えて、会話を通じて理解させ乗せていくということでしょうか。さりげなく現場を盛り上げていけた時が、自分は一番嬉しいです。